私と夫が話し始めると、息子は必ず、横から話しかけてきました。
「ねえママ、あのね」「パパ、これ見て」
タイミングを狙ったように、いつも会話の真ん中に割り込んでくる。
私は、その理由を知っていました。
私も子どもの頃、同じように父と母の間に割り込んでいたからです。
息子は、私と夫が喧嘩をしないように、会話そのものをさせないようにしていたのです。
あの頃の息子
夫婦の空気が一番張りつめていた頃、息子はかなり空気を読む子になっていました。
私と夫の顔色をうかがって、わざと明るく振舞う。
場を和ませるようにおどけてみせる。
そして、どうしようもなく辛い日は、親子でいっしょに泣きました。

学校では、息子は人気者です。
優しくて、ムードメーカーで、先生にも友達にもかわいがられるタイプ。
周りから見れば、なんの問題もない、
むしろ「いい子」に見えていたと思います。
でも私は、あることに気づいていました。
あんなに友達が多いのに、心から本音を話せる友達は、いないのかもしれない。
みんなを笑わせて帰ってきた日ほど、どこか疲れた顔をしている。
そして時々、ためこんだものがあふれるように、突然心のバランスを崩す日がありました。
その行動には、名前がありました
息子の行動や、子どもの頃の私がしていた行動には名前がありました。
「ピエロ役(おどけ役)」
正直、この名前を知ったのはつい最近です。
なるほどな…と感心してしまいました。
家の中に喧嘩や緊張が多いとき、子どもはその重たい空気に耐えられず、
自分から「場を明るくする係」を引き受けること。
突然おどけたり、笑わせたり、ニコニコと笑顔を振りまいたり。
心理学ではこれを「ピエロ役」や「おどけ役」と呼ぶそうです。
ピエロ役の子は、周りからはこう見えます。
でも、その笑顔の内側では、寂しさや不安、緊張をぐっと押し込めていることが多いといいます。
「つらい」と言えない。
弱音を吐けない。
友達は多いのに、心を許せる相手がいない。
そして、ためこんだ気持ちが限界に達すると、
突然心のバランスを崩してしまうことがある──。
読みながら、息子の顔と子どもの頃の自分の顔を思い出しました。
会話に割り込んでくるのも、明るく振舞うのも、息子なりの精一杯の
「家族を守る方法」だったのです。
まだ小学生の小さな体で。
家は、子どもにとって「安全基地」だといわれます。
両親の仲が張りつめていると、その基地が揺らぎます。
子どもは親が思っている以上に、家の空気を敏感に感じ取っています。
喧嘩の場面を直接見ていなくても、です。
もしあなたのお子さんが「手のかからない、いい子」で、
いつも場を明るくしてくれるなら。
それはもしかしたら、小さな心が出しているSOSかもしれません。
罪悪感と、息子がくれたもの

私の中にあったのは罪悪感だけでした。
そのことを自覚していたし、罪悪感を感じながらも
息子を守りたいのに守れていない自分に嫌気がさしていました。
けれど、
私がどうしようもなく辛かった日、息子はそっと寄り添ってくれました。
何も言わずに、たくさんギューっとハグをしてくれました。
あの小さな腕に、私は何度も救われました。
だからこそ、決めたのです。
今度は私が、この子の安全基地を取り戻す番だと。
安心が戻るまでには、時間がかかりました
夫との関係が再構築に向かっても、
息子の心はすぐには変わりませんでした。
「パパとママ、本当にもう喧嘩しない?」
そう心から信じられるようになるまで、再構築をし始めてから11か月。
完全に再構築成功してから、約3か月かかりました。
子どもの安心は、大人の「もう大丈夫だよ」という言葉ではなく、
毎日の空気の積み重ねでしか戻らないのだと思います。
でも今、息子は変わりました。
パパの機嫌をうかがうことも、なくなりました。
前はびくびくしながらパパと一緒に向き合っていた宿題も、
今はパパといっしょに楽しく・頑張ってやっています。
工作も、生き物のお世話も、ふたりで楽しそうにやっています。
これはぜんぶ、「安全基地が戻ってきたサイン」なのだと思います。
自分の好きなことを選べるのは、家が安心だから。
反論を言えるのは、「言っても大丈夫」と信じられるから。
子どもの変化は、家の空気の変化をいちばん正直に映す鏡でした。
今では、息子はピエロをやめ、自分の時間をすごせています。
同じ空気の中にいる、あなたへ

もし今、あなたの家に張りつめた空気があって、お子さんが「いい子」すぎるなら。
ピエロのように振舞って、場を明るくしてくれているなら。
どうか、自分を責めないでください。
私もずっと「私が悪い」と思っていた側の人間です。
責める代わりに、気づいてあげてほしいのです。
その明るさの内側にあるものに。
そして、覚えていてほしいことがあります。
完璧な家庭じゃなくてもいいそうです。
大切なのは、喧嘩をしないことよりも、
「壊れかけた関係も、直せる」という姿を見せること。
修復していく親の姿は、子どもにとって「人との関係はやり直せる」という、
何よりの学びになるといわれています。
うちの息子も、まだ回復の途中かもしれません。
それでも、家が安全基地に戻った今、息子のペースで、
少しずつ「本当の自分」を出せるようになると信じています。
気づいた今からでも、遅くありません。
子どもの安心は、取り戻せます。
私の家が、少しずつそうなっているように。
※この記事は私の実体験と、心理カウンセラーの方々の発信を参考にしています。お子さんの様子が心配なときは、専門家への相談も選択肢のひとつです。
同じ心境にいる人たちの心の支えに少しでもなれていれば幸いです🍀
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