「自分はどうすれば幸せなんだろう」と思っていた
人と一緒にいることは好きなのに、気づくといつも疲れていた。
新しい友達を作ろうとすれば、「うまくやれるかな」と不安になる。
仲良くなれたと思っても、関係を続けていくことに、どこかエネルギーを使い果たしてしまう。
だから、いつの間にか一人でいることが増えて、でも孤独で。
「私はどうすれば幸せになれるんだろう」
そう思いながら、ある日ぼんやりとスマホを眺めていた。
「気遣いさんの特徴」
「優しい人が疲れやすい理由」
——そんな動画を流し見していたとき、SNSでひとつの言葉が目に飛び込んできた。
「HSS型HSP」
パッと見た瞬間、なぜか「あ、これかも」と思った。
読み進めるうちに、ずっとモヤモヤしていた霧が、すうっと晴れていくような感覚があった。
HSPって、どんな人のこと?
HSPとは、Highly Sensitive Personの頭文字をとった言葉で、
日本語にすると「とても敏感な人」という意味です。
アメリカの心理学者、エレイン・アーロン博士が提唱した概念で、
生まれつき感じる力が強く、周りの刺激を人一倍深く受け取ってしまう気質のことを指します。
病気でも障害でもなく、生まれ持った「感じ方の個性」のようなもの。
5人に1人はHSPだと言われています。
HSPには、次の4つの特徴(DOESと呼ばれます)があります。
D:深く考える(Depth of processing)
物事をじっくり、深く、あらゆる角度から考えてしまう。
「なんでそんなに考えるの?」と言われることがある。
O:刺激に敏感(Overstimulation)
音・光・匂い・人混みなどに疲れやすい。
にぎやかな場所で楽しんでいても、気づいたらぐったりしている。
E:感情が動きやすく、共感力が高い(Emotional reactivity and Empathy)
映画やニュースで感情移入しすぎてしまう。
人の表情やちょっとした言葉の変化に、自分も影響を受けてしまう。
S:細かいことに気づく(Sensitivity to Subtleties)
誰も気にしないような小さな変化を、ひとりだけ察知してしまう。
「よく気がつくね」と言われることが多い。
私はその中でも「HSS型」だった
HSPにはいくつかのタイプがあります。
その中でも私が当てはまったのが、HSS型HSPというタイプ。
HSSとはHigh Sensation Seeking、つまり「刺激を求めやすい人」という意味です。
普通のHSPが
「刺激に疲れやすいから静かにしていたい」タイプだとすると、
HSS型HSPは
「刺激に敏感で疲れやすいのに、新しいことや変化を求めてしまう」という、
自分の中に矛盾を抱えたタイプ。
「やってみたいのに、やったあとに疲れ果てる」
「人と話したいのに、話したあとにぐったりする」
この矛盾が、長いあいだ自分でも説明できなかった。
HSS型HSP セルフチェックリスト
あなたはいくつ当てはまりますか?
<刺激を求める自分>
<繊細・敏感な自分>
<矛盾・葛藤を感じる自分>
<考えすぎる自分>
結果の目安
だからあんなに、疲れていたんだ
チェックリストを見たとき、あの12年間のことが一気に頭によみがえった。
夫が帰ってきたとき、玄関のドアの音だけで「今日の機嫌」がわかった。
足音が重いか、軽いか。
「ただいま」の声が低いか、普通か。
それだけで、私の体はもう準備を始めていた。
笑顔を作って「お疲れさま!」と言い、ご飯の準備をして、お風呂も整えて。
夫が何も言わなくても、先回りして動いていた。
「機嫌を直してもらわなきゃ」じゃなくて、
夫が不機嫌だと、私自身が苦しかったから。
あの先読みは、気遣いでも愛情でもなかったのかもしれない。
HSPゆえに、相手の感情を敏感に受け取りすぎて、自分が楽になるために動いていたのだと、今はわかる。
息子の宿題を教えていたとき、夫にこう言われた。
「ママが息子にそう言うから、息子がダメになっていくんだよ。ママは黙ってて」
その言葉は、何日も頭から離れなかった。
考えて、考えて、考えすぎて、胸が苦しくなる。
寝る前も、家事をしながらも、その言葉が繰り返し浮かんできた。
HSPの人は、言葉を深く受け取りすぎる。
普通の人なら「そんなこと言われたっけ」と忘れてしまうような一言も、
私には刃のように刺さって、何度も何度も傷を広げてしまう。
泣くことも、できなかった。
夫から言われたことがある。
「泣かれるとこっちが悪いみたいだから、嫌なんだけど。何も言えなくなるじゃん」
それからは、辛くても傷ついても、涙をぐっと堪えるようになった。
「泣いたら夫を困らせる」
「私が我慢すればいい」
本当は泣きたかった。
本当は「それは傷つく」と言いたかった。
でも、その感情を飲み込むことが、いつしか当たり前になっていた。
HSPは感情が動きやすい。
それなのに、感情を出すことを封じられた生活が、どれほど消耗するものか。
今思えば、あの頃の私は、自分の感情をずっと見ないふりして生きていた。
HSPと、自己愛気質の夫が組み合わさるとどうなるか

ここで少し、整理して考えてみたいと思います。
自己愛傾向のある人には、いくつか共通した特徴があります。
自分が正しいという感覚が強く、相手が今どう感じているかより、自分がどう見られているか、自分の思い通りになっているかを優先しやすい。
悪意があるわけではなく、そういう認知の仕方になっている。
というイメージに近いかもしれません。
つまり、相手の感情への「アンテナ」が、もともと向きにくい状態にある。
一方HSPは、その逆です。
相手の感情へのアンテナが、常に全開になっている。
言葉にならない空気、表情のわずかな変化、声のトーンのずれ
——そういうものを、意図せず、自動的に受け取り続けてしまう。
この二つが同じ家の中に存在すると、何が起きるか。
①HSPの人が相手の感情をいち早く察知して、先回りして動く。
②相手はそれが当たり前になる。
③気づかないまま、要求や言葉はさらに強くなっていく。
④HSPの人は「もっとうまくやらなければ」とさらに気をつかう。
⑤そして、静かに、限界まで消耗していく。
これは、どちらかが悪いという話ではなく。
気質の組み合わせが、自然とそういう構造を作り出してしまっていた
ということだと今は思っています。
HSPという言葉を知ったとき、やっと静かな答えが見えた気がした。
知れてよかった、と静かに思う
「HSS型HSP」という言葉を知ったとき、「嫌だな」とは思わなかった。
むしろ、「そうか、そういうことだったのか」 という、
ほっとするような感覚があった。
HSS型だとわかったことで、
「あれこれ試したくなる自分」
「新しいことに飛び込みたくなる自分」
にも、ちゃんと説明がついた。
傷つきやすいのに動いてしまう矛盾も、弱さじゃなくて、私という人間の自然な姿なんだと。
まだ、うまく付き合えているかどうかはわからない。
でも、「なぜこうなるのか」がわかるだけで、自分を責める気持ちが少しだけ軽くなった。
この気質は、うまく使えれば、人の気持ちに気づける力にもなる。
ただ今は、そう思えるようになってきた、というくらいの段階で…。
焦らず、少しずつ、自分との付き合い方を覚えていけたらいいと思っています。
【書籍】HSP!最高のトリセツ 気にしなくて大丈夫、気にしたって大丈夫あなたも、「気にしすぎ」じゃなかったかもしれない
もしこの記事を読んで、「わかる」と思った人がいたなら。
あなたが疲れやすいのは、心が弱いからじゃない。
人間関係がうまくいかないのは、あなたがダメだからじゃない。
ただ、人一倍深く感じる心を持って生きているから、
その分だけ、消耗することが多かっただけかもしれない。
私はHSPを知って、あの日々がやっと腑に落ちた。
つらかったのには、ちゃんと理由があったんだと。
それだけで、少し、自分に優しくなれた気がした。
自分を知ることは、自分を責めなくてよくなることへの、小さな一歩なのかもしれない。
この記事が、同じように疲れているだれかの
「そうか、私だけじゃなかったんだ」
につながりますように。


