2ヶ月間、私はその本を渡せなかった。
渡したかった。話しかけたかった。
でも——怖くて、できなかった。
「あなたは自己愛性パーソナリティ障害だよ」と言いながら本を差し出したところで、素直に受け取ってもらえる保証なんてどこにもなかった。否定されたら、また私が壊れる。そう思うと、体が動かなかった。
どう言えば伝わるだろう。どう言えば、読んでもらえるだろう。そんな不安と恐怖が頭の中をぐちゃぐちゃにしたまま、2ヶ月が過ぎていった。
自己愛性パーソナリティ障害のパートナーを持つ方に読まれているこの本は、「当事者があまり抵抗なく読める」という口コミを見て購入していました。夫自身に自分の傾向を知ってほしい——その一心で。
自己愛性パーソナリティ障害 (心のお医者さんに聞いてみよう) [ 市橋秀夫 ]
決意させた「夫の一言」
ある夜、夫が言った。
「俺はいつになったら許されるの?いつまでこうしてればいいの?」
また、始まった——と思った。
話し合いになるたびに、夫の言葉はいつも同じ場所をぐるぐるしていた。
- どうして俺ばかり頑張らなきゃいけないのか
- 妻にも、もっと頑張ってほしい
- 俺は、いつ許されるのか
私が辛いという話をしていたはずなのに、気がつくと夫が訴える側になっていた。かみ合わない。何度繰り返しても、かみ合わない。
そのとき、私の中で何かが決まった。——今日、言おう。
手が震えながら、本を手渡した夜
手が震えた。
「これを読んでほしい。自分のことだと思って読んでほしい。」
そして、2ヶ月間ずっと言えなかった言葉を、口に出した。
「読むか、離婚するかだよ。」
怖かった。でも、言った。夫に本を差し出したあの瞬間のことは、今でも鮮明に覚えている。震える手、乱れた呼吸、頭の中を駆け巡る「もしまた否定されたら」という恐怖。それでも、言うしかなかった。もうあのぐるぐるには、戻れなかった。
夫の予想外の反応——そして変化が始まった
怒るかもしれない。否定されるかもしれない。「俺は違う」と言われるかもしれない。私はそう思っていた。
でも夫は、静かに言った。
「本くらい、全然読むよ。」
そして本の表紙を見て、こう続けた。「これ、Xでよく見る…。知ってる。」
否定しなかった。抵抗しなかった。夫はそのまま、本を開いた。ページをめくる夫の表情が、少しずつ柔らかくなっていくのがわかった。
緊張していたのは、私だけじゃなかった。夫も、自分の状態をどこかでわかっていたのかもしれない。そして、どうすればいいかわからなくて、困っていたのかもしれない。
それから少しずつ、夫が変わり始めた。「ありがとう」「ごめん」——今まで聞いたことのなかった言葉が、ぎこちなくても夫の口から出るようになった。人の気持ちを汲み取ろうとしている——そう感じる瞬間が、少しずつ増えていった。
完璧じゃない。まだ揺れることもある。でも、変わろうとしている姿は、確かに見えた。
あの夜が分岐点だった——「夫婦再構築」がリアルに見えた瞬間
怖かった。でも——すっきりした。
本を受け取ってくれたこと。開いて、読み始めてくれたこと。自分のこととして、受け取ってくれたこと。私の提案を、否定しなかったこと。どれも、私にとって本当に嬉しかった。
離婚をいつするか——ずっとそう考えていた私に、「夫婦再構築」という言葉が初めてリアルに見えた夜だった。
今も、希望と絶望を繰り返している。「やっぱり無理かも」「夫が変わってきている」「また嫌なことを言われた」「優しくなってる」——そうやって何度も心を揺らしながら、それでも前に進んでいる。
今言えることは、ひとつだけ。「あの夜があったから、今がある。」
まとめ
2ヶ月間渡せなかった本を、ある夜ついに夫に手渡した。「読むか、離婚するかだよ」——震える手で伝えた言葉を、夫は否定しなかった。あの夜が、私たちの夫婦再構築の分岐点になった。
自己愛性パーソナリティ障害の傾向があるパートナーに悩むすべての方へ——変化は、怖くても一歩踏み出したその夜から始まることがある。まずは、その傾向を知ることから始めてみてください。
自己愛性パーソナリティ障害 (心のお医者さんに聞いてみよう) [ 市橋秀夫 ]

